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2021/12/19

2021年チャンピオン 下國伸インタビュー

お店は大盛況!SNSに大量のメッセージ!

前回大会に出演して何か変化は?

全てが大きく変わりました。お店は連日盛況ですし、自分に対する人の態度も変わった(笑)。

「(優勝すると)こんなにやさしくされるんだ」みたいなこともあります。もちろん家族も喜んでくれていて、僕がテレビに出たこともあり、放送の翌日は子供が学校で人気者だったそうです(笑)。大会が終わってから数ヶ月は、目まぐるしく日々を過ごした印象ですね。

優勝直後からテレビ出演も増えたそうですが?

テレビ出演には全然慣れないですね(笑)。

でも、僕がテレビに出ることによって料理人を目指す人が増えるよ、とも聞きますし、「料理人を諦めていたけどやる気が出ました」などのダイレクトメッセージがSNSに届きます。それは素晴らしいことで、もし僕がテレビに出演することが料理人の明るい未来への背中を押すのなら出演は続けたいですね。

「前回大会を見た」という人がお店に来たときの反応は?

テレビに出るということで、自分をよく見せたい気持ちが本当はありましたが、実際はそんな余裕は無くて(笑)、結果的に等身大の自分を出して必死に戦っていました。テレビ番組だからといって着飾る余裕が全然なかった。 でも逆にそこへ感情移入してくれた人が多かったみたいです。「(総監督で料理をジャッジした)須賀さんって、厳しい人だね」など、応援してくれる人が多くいました。

優勝してから家族との絆が深まるなどは?

うちの家族は意外に冷めているんですよ(笑)。

本当は「連日お祝いが続いた」みたいに言いたいんですけど、実際は無くて、ごめんなさい。

でも、優勝したことがゴールではなくて、ここからが勝負だと思っているので、それぐらいがちょうどいいのかもしれません。

新型コロナ感染拡大防止のため厳しい状況は続いていますが、ご自身のお店の状況は?

こんなご時世なのでもどかしい、というのが正直なところです。本当は、優勝した今がモチベーションも高いので、席をフルに使って今まで以上の料理を見せたい気持ちはあります。

でも、飲食店の大前提として安心して、安全に食事していただく、ということが何よりも大事なので、「僕の、今この瞬間の料理を食べてー」と大きな声で言いたい気持ちを押さえています(笑)。今はいろんな見せ方ができる世の中なので、テレビに出演できたり、SNSを活用したりできます。何かしらの方法、何かしらの形で、僕はこんな意気込みで料理を作っています、というのを見て欲しいですね。

王者の風格が出てきましたか?

自分では何も変わってないと思っています。料理に対する気持ちは基本的に変わってない。ずっとこのまま。その気持ちだからこそ優勝できたのかもしれません。

何も考えずに出ていい 何かが変わるから

前回大会について振り返ります。
前回は大会期間を通じて一番戦った男です(※)
最終的には王者にもなりました。出場して良かったことはなんですか?

(※)下國シェフは出場したファイナリスト16名のうち最多の合計8回を戦った


大会に出ないという選択肢は今でもありません。迷っている人がいるなら、それは絶対に出るべきです。僕たち料理人も人間なので、常に料理を作り続けていると、毎日の事なので作ることが作業になってしまったり、気持ちがどこかよそへ行ってしまうことはどうしてもあります。でも、その中で自分を変えていく、進化していくためには何か「きっかけ」が必要です。そのきっかけとしては、前回大会のように大きな大会が一番分かりやすく該当します。

出場したことで、日々の自分の作業を見つめ直し、自分がやっていたことは間違っていなかった、正しかった、という答えに僕はたどり着きました。その経験を踏まえて、人には日々の料理が作業になってはいけないよと伝えています。

今、料理をやっているという感覚、それを大会に出ることで再認識できることは大事です。


もし、前回大会に出ていなければ、僕は新たな境地へずっとたどり着けず、今までと変わらない、挑戦しない自分を続けていたと思います。

もちろん日々楽しく料理を作り続けることも大事ですが、大会へ出場する、一歩踏み出すという勇気はすごく大事だと思います。

料理人としてさらに殻を破るきっかけにもなった?

そうですね。やっぱり、こんな大会は他に無い。

ただの料理コンテストじゃないんです。究極まで自分の精神を追い詰めてそれに打ち勝つことが求められます。もっともっと美味しい料理、もっともっとみんなを笑顔にするにはどうしたらいいか、それを求めて自分を究極まで追い込んで勝ち取ったものは、何ものにも代えがたいです。

前回大会を見て奮起する料理人がエントリーを考えていると思います。
応募しようとしている料理人へメッセージをお願いいたします。

一言「出ろ」ですね(笑)。何も考えずに出ていい、それぐらいの価値があります。出場して、変わらないことなんて無い。絶対に何かが変わります。

出て戦ううちに自分の中の感情も変化するし、外の世界も見られます。ましてや、テレビ番組で豪華な芸能人へ料理を振る舞うなんて経験も普段では絶対できませんから、それが実力、自信、普段の料理の見直しにもつながります。

もう一度言います。「今すぐ応募してください!」

前年王者の次の目標、夢は?

すごく有難いことに調理師学校の生徒さんや未来の料理人の卵の方から、ものすごい数の「一緒に働きたい」というメッセージをもらいます。

ただ、残念ながら今の僕は、一介のレストランシェフであり、それを受け入れられる状況ではありません。ですから、未来の料理人をきちんと支えられる受け口を作っていかなくちゃいけないと思っています。未来の料理人の分母を増やしたい。そんなイメージです。

料理の神さまに出会う瞬間がある

海外進出などは?

ずっと北海道を大事にして生きてきたので、北海道でお店を出して、北海道に素晴らしいレストランを構えたい、とも思いますが、海外のことも考えてしまいます。今はとても注目されていて、このお店で忙しくさせてもらっています。

まさに前回大会の大きなうねりをうけていますが(笑)、今後の展開としては、僕の姿をみて料理人になろう!と目指す人を増やすために、僕自身が世界と戦えるようなトップシェフにならないといけないとも感じています。


20代の頃、フランスへ行って腕を磨きましたが、今同じことをするのは正直怖い面もあります。

この年齢ですし、家族もいます。でも、海外で自分の力を試すことも必要かもしれない。明るい未来のために、料理人はここまでできるんだ、というのも見せたいですね。

王者として「CHEF-1グランプリ2022」がどんな大会になってほしいですか?

僕が出た2021年の大会は、なにかドラマがありました。常識では考えられないようなドラマです。なんというか、まさに『料理の神さま』がいるな、という感じです。その神様のいたずらが絶対にあって僕は優勝できた、そんな気がしています。ですから、それを上回るぐらい面白いドラマが生まれる大会になってほしいです。

あとから大会を振り返ってみたら長編映画を一つ見たような感じになる、素晴らしい大会になってほしいですね。